認定された研究開発成果利用事業課題設定の背景
研究開発・成果利用事業の目標

1 事業課題の「国内自生植物・主として花木類の営利栽培用品種の開発並びにその利用による中山間地域の産業振興」設定の背景

 管理する山林や農地では_、雑草として扱っている植物類は鑑賞花き(切花、鉢物、植木等)生産の立場から見ると宝である。

 その種類の多さは、温帯でしかも緯度、経度、標高差、海流等自然立地の多様性の大きさを反映している日本は世界的に見て、宝庫である。
 それを立証しているのが、ユリ、シャクヤク、アジサイ等々に見られるように、日本原産の植物が諸外国で改良され、高度な園芸作物・品種となって世界流通し、それを日本の生産者が植物特許料を支払って栽培する状況である。
 これは本来、日本がこの商業的改良開発を世界に先駆けて行っていれば、花き産業は大きく強い産業となっていたはずであるし、この取り組みはこれから活発化させても世界に対し優位を確保できる素地がある。

 一方国内の切花を中心とする花き産業は、カーネーション、キク等の主要花き類が、 品質の高い成品を生産費が安く周年供給できる国々からの輸入により、生産や生産農家の著?を招き、この輸入が5 0%に達したと言われるカーネーション産業は崩壊しつつある。

 これらの減少に向かう種類の経営改善には、輸入に強く、世界に生産品や種苗、栽培技術知財も含め、発信して行ける種類品種の開発が望まれている。
 また、国内の中山間地域では、商業産業化可能な自生植物の宝庫であるという認識 が薄く、自生植物を有益性のある商品として開発、利用をしている事例は少ない。
 とりわけ、事業テーマの主体である実物切枝としての栽培化による利活用はほとんど認職されていないのが実情である。

 自生花木の研究は研究機関等においては、成果を得るのに長年月を要するため取組み課題としては難があるため少なく、花き関係技術者も対象植物(草花類、鉢花類、 球根類、ラン類等)や利用(切花、鉢物、植木、苗物等)が多様化しているため、長年この技術関係に携わった生産者や技術者でないと花木の技術改良までには経験が至らない実態もある。

 この事業は
花き業界の将来に展望を見いだす可能性の高い、自生植物の産業化、並びに有益な自生植物が地元にありながらも、遊休荒廃地の利用や高齡者でも取り組める産業として生かせること、さえも認識されず、荒廃しつつある中山間地域での新しい産業づくり、の二つを兼ね備えた効果を目標としている。

この事業は研究開発と成果利用に長年月を要する特殊性を持つことを内在する。


 自生植物の実生栽培では「母本の現地選抜一種子採取一栽培一開花・結実(鑑賞価値確認、変異確保):系統・品種候補確定一確定系統・品種の増殖、栽培―変異確認:品種確定」までの工程に10年内外(種類によってはそれ以上)を要すること、さらに加え、品種登録申請から登録認可までに最短3年内外を必要とする。

 従って、事業の研究開発計画を母本現地選抜の当初から実施する計画になると、研究開発そのものの成果を得る期間にも事業期間は足りないことになり、成果利用の段階までには到底至らない。

 研究開発により開発した種苗は、種苗登録を申請し受理された時点から、知的財産化し国内流通は可能となり、成果利用できるが、国際的流通には種苗登録が認可されてからとなるため、さらに最低3 年内外は成果利用に供することができない。
 一方、自生植物の品種確定までの間に得る、栽培技術情報、開発育種のノウハウ、選抜外や対照系統の成品販売を通じての商品性・流通販売適性・鑑賞利用特性情報、種類毎の経営(収益性)試算結果等のノウハウ・情報は蓄積し、成果利用には品種確定をする10年内外前から可能となる。

 従って、この自生花木類の事業開始は育種過程中から採択され、効果利用も育種成果の品種登録認可が行われない前から着手することを前提に展開している。
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